股関節の痛み
こんな症状はありませんか?
  • 歩くと股関節が痛い
  • 股関節の曲げ伸ばしに違和感がある
  • 立ち上がるときに股関節に違和感がある
  • 子どもが歩くと痛がる
  • 歩き方がおかしいと指摘される
  • 乳幼児で股開きに左右差がある
股関節の痛み

変形性股関節症

変形性股関節症は、股関節の軟骨がすり減り、骨同士が直接擦れ合うことで痛みや関節の変形が生じる疾患です。進行すると関節の動きが悪くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。加齢や関節への過度な負担が原因となり、女性や中高年に多く見られる病気です。

症状

  • 股関節の痛み:歩行や立ち上がるとき、長時間座った後に立ち上がるときに股関節に痛みが生じます。痛みは初期では動作時のみですが、進行すると安静時にも痛みを感じることがあります。
  • 関節のこわばり:股関節が硬くなり、動きが制限されます。しゃがむ動作や足を広げる動きがしにくくなります。
  • 歩容の変化:股関節が徐々に変形し足の長さの変化や筋力低下のため足を引きずるような歩き方になることがあります。
  • 腰や膝の痛み:股関節をかばい、腰痛や膝痛をきたすことがあります。

原因

  • 加齢:軟骨は年齢とともに摩耗しやすくなります。
  • 股関節の先天異常:股関節が正常に形成されない「先天性股関節脱臼」や「臼蓋形成不全」がある場合、関節に負担がかかりやすく、変形性股関節症を引き起こすリスクが高まります。
  • 過度な負担:体重が重い、激しいスポーツや肉体労働などで股関節に過度の負担がかかると、軟骨がすり減りやすくなります。
  • 過去の外傷やケガ:股関節の骨折や外傷が原因で関節が正常に機能しなくなることがあります。

治療法

保存療法

  • 薬物治療:鎮痛剤や消炎剤を使用して痛みを軽減します。
  • 理学療法:ストレッチや筋力強化運動を通して、前腕の筋肉と腱を強化し、症状を改善します。
  • 体重管理:体重を減らすことで股関節への負担を軽減します。
  • 装具療法:股関節の負担を減らすために杖やサポーターを使用することがあります。

手術療法

保存療法で効果がない場合や、重度の変形がある場合には、人工関節などの手術を考慮します。

先天性股関節脱臼

先天性股関節脱臼は、出生時に股関節が正常に形成されていない状態を指す疾患です。この疾患では、股関節を構成する大腿骨の骨頭が股関節の受け皿である臼蓋(きゅうがい)にしっかりとはまっておらず、脱臼しやすくなるか、脱臼した状態になります。特に女児に多く見られ、新生児期や乳児期に発見されることが多いですが、軽度のものは成長とともに見逃され、歩行開始後に気付かれることもあります。早期に治療が行われた場合、ほとんどの子どもは正常な股関節機能を回復し、日常生活に問題なく過ごせます。しかし、発見が遅れたり治療が不十分であった場合、変形性股関節症や歩行障害などの合併症が将来的に発生する可能性があります。

症状

  • 股関節の不安定性:股関節が外れたり戻ったりする動きがみられます。通常は出生直後の診察で発見されます。
  • 脚の長さの違い:片方の股関節が脱臼していると、脚の長さが左右で異なることがあります。
  • 開排制限:股関節が硬く、おむつ交換の時に股関節の可動域制限を認めます。
  • 歩行の異常:脱臼が成長後まで続くと、歩き始めた時に足を引きずったり、左右の脚を交互に引きずるようにして歩くことがあります。

原因

先天性股関節脱臼の原因は完全には明らかになっていませんが、以下の要因が関係していると考えられています。
  • 遺伝的要因:家族歴がある場合、リスクが高まります。
  • 胎内の環境:妊娠後期に子宮内でのスペースが限られ、胎児が股関節を屈曲している状態が長く続くと、股関節に負担がかかります。特に、逆子(骨盤位)で生まれた子どもはリスクが高いです。
  • 性別:女児に多く見られます。女性ホルモンの影響で関節が柔らかくなり、脱臼しやすくなることが一因とされています。
  • 出生後の環境:股を開いた状態での抱っこ(コアラ抱っこ)が重要です。長時間の横抱きはリスクが高くなります。

治療法

治療は早期発見が重要です。早期に治療を開始することで、正常な股関節の発育を促進し、将来的な問題を防ぐことができます。

保存療法

  • リーメンビューゲル装具:新生児や乳児期に発見された場合、股関節を正しい位置に固定するための装具が使用されます。この装具により、股関節が正常に発育するように促します。

手術療法

装具で改善しない場合や、発見が遅れて脱臼が固定化している場合は、手術が必要になることがあります。股関節の骨を整復する手術や骨切り術が行われます。

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)

大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)は股関節における異常な接触が原因で、股関節の痛みや損傷を引き起こす状態です。FAIは、股関節を構成する大腿骨の骨頭と、それを受ける臼蓋(骨盤側の関節部分)の形状異常が原因となり、股関節が正常に動かないことによって発生します。結果として、関節の軟骨や周囲の組織が摩耗し、股関節の機能が低下することがあります。

症状

  • 股関節の痛み:主に太ももの前面や鼠径部に痛みが現れます。痛みは特に座ったり、運動をするときに悪化します。
  • 股関節のこわばり:関節がスムーズに動かなくなり、こわばりを感じることがあります。
  • 動作時の制限:股関節を深く曲げたり、外転させたりする動作に制限がかかることがあります。
  • クリック音やロッキング:関節を動かす際にクリック音や引っかかる感覚がある場合があります。

原因

FAIの原因は、主に股関節の構造的な問題に起因します。以下が主な要因です。
  • 成長期の骨の発育異常:FAIは成長期に股関節が異常な形状に発育した場合に発症します。特に、スポーツや活動が多い人に見られることがあります。
  • 遺伝的要因:家族に股関節の異常がある場合、FAIのリスクが高まることがあります。
  • 外傷:股関節に強い負荷や衝撃がかかることによって、関節の変形が進行することがあります。

治療法

保存療法

  • 安静:股関節にかかる負担を減らし、炎症を軽減します。
  • 薬物療法:鎮痛剤や消炎剤を使用して痛みを軽減します。
  • 理学療法:股関節周囲の筋肉を強化し、柔軟性を向上させることで、痛みを軽減します。

手術療法

保存療法で効果がない場合は手術を検討します。

大転子滑液包炎

大転子滑液包炎とは、股関節の外側にある「大転子」という骨の上に位置する滑液包(関節や筋肉を滑らかに動かすための袋状の組織)が炎症を起こした状態です。この炎症により、股関節や太ももの外側に痛みや腫れが生じる疾患です。大転子滑液包炎は、歩行や階段の上り下り、長時間の座位など、股関節を使う動作で痛みが増すことが特徴です。多くの場合、症状は数週間から数か月で改善します。ただし、根本的な原因(筋肉の不均衡や姿勢の問題など)に対応しないと再発する可能性があるため、予防的なエクササイズや日常の注意が必要です。

症状

  • 股関節外側の痛み:最も一般的な症状で、股関節の外側に鈍い痛みや鋭い痛みを感じます。痛みは、触ったり、圧力をかけたりすると悪化します。
  • 痛みの広がり:痛みは太ももの外側から膝にかけて広がることがありますが、股関節内部に痛みを感じることは少ないです。
  • 動作による痛みの悪化:歩く、階段を上る、長時間座る、横向きに寝るなどの動作で痛みが強くなることがあります。
  • 腫れや熱感:炎症が進行している場合、痛みのある部位に腫れや熱感が見られることがあります。

原因

  • 繰り返しの摩擦や圧力:特に、走る、歩く、階段を上るなどの繰り返しの動作が股関節の滑液包に摩擦を加え、炎症を引き起こします。
  • 股関節や脚のアライメント異常:足の長さの違い、O脚やX脚、股関節の異常な使い方が、滑液包に負担をかけることがあります。
  • 筋肉の不均衡や緊張:お尻や太ももの筋肉のバランスが悪いと、大転子周囲の滑液包に過度のストレスがかかり、炎症が生じます。
  • 過度の運動や活動:特に急に運動量を増やしたり、無理な運動を続けることで滑液包に炎症が起こることがあります。

治療法

保存療法

  • 安静:痛みの悪化を防ぐために患部を休め負担を軽減します。
  • 薬物療法:鎮痛剤や消炎剤を使用して痛みを軽減します。
  • 注射療法:滑液包にステロイド薬を注射して炎症を強力に抑えます。症状が強い場合に効果があります。
  • 理学療法:股関節周囲の筋肉を強化し、柔軟性を向上させることで、痛みを軽減します。

単純性股関節炎

単純性股関節炎は、股関節の滑膜に一時的な炎症が生じる疾患で、特に小児に多く見られます。この病気は股関節の痛みや歩行困難を引き起こしますが、数日から数週間で自然に治癒することが一般的です。細菌が原因である化膿性股関節炎との鑑別が重要です。

症状

股関節の痛み、歩行時の足を引きずる動作、太ももや膝に放散する痛みが主な症状です。小さなお子さんの場合は急に歩かなくなるなどもあります。

原因

正確な原因は不明ですが、ウイルス感染や軽度の外傷、アレルギーなどが関連している可能性が示唆されています。

治療法

保存療法

  • 安静:股関節にかかる負担を減らし、炎症を軽減します。
  • 鎮静剤:鎮痛剤や消炎剤を使用して痛みを軽減します。
  • 自然治癒:多くの場合、数日から数週間で自然に改善します。