手・肘の痛み
こんな症状はありませんか?
  • ものを持つときに肘が痛い
  • 指先がしびれる
  • 手首を動かすと痛い
  • 指を曲げるとき引っかかる
  • 指の関節を動かすと痛い
  • 朝に手がこわばる
手・肘の痛み

上腕骨外上顆炎(テニス肘)

上腕骨外上顆炎は肘の外側にある「上腕骨外上顆」という部分に炎症や損傷が生じる状態を指します。これは、前腕の筋肉や腱に繰り返し負担がかかることで発生するもので、特にテニスのようなラケットスポーツをする人に多く見られることから「テニス肘」と呼ばれていますが、スポーツ以外の日常生活の動作でも発症することがあります。多くの場合、適切な保存療法で改善し、数週間から数か月で痛みが軽減します。ただし、再発防止のためには、適切なストレッチや筋力強化、正しい動作を習得することが重要です。

症状

  • 肘の外側の痛み:肘の外側に痛みが生じます。特に物を持ち上げたり、握ったり、腕をひねる動作で痛みが増します。
  • 握力の低下:痛みにより物をしっかり握ることが難しくなります。
  • 腕や肘のだるさ:痛みが強いと、腕全体がだるく感じられることがあります。
  • 肘の圧痛:外側の肘の部分を押すと痛みが強くなることが多いです。

原因

上腕骨外上顆炎は、前腕の伸筋群(手首や指を伸ばす筋肉)が肘の外側に付着する腱の部分で過剰な負担がかかることで引き起こされます。以下のような要因が主な原因です。
  • 繰り返しの動作:ラケットスポーツやゴルフ、さらには手作業(タイピング、大工仕事など)による繰り返しの負荷が原因となります。
  • 急激な運動負荷:普段行わない運動を突然行うことや、準備運動不足が原因です。
  • 加齢:年齢とともに腱の柔軟性が失われ、炎症が起きやすくなります。

治療法

保存療法

  • 安静:患部を安静に保つことが重要です。痛みがある動作を避けます。
  • 薬物治療:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎剤を使用します。
  • 注射療法:炎症を抑えるためにステロイド注射を行います。
  • 理学療法:ストレッチや筋力強化運動を通して、前腕の筋肉と腱を強化し、症状を改善します。
  • 装具療法:エルボーバンドなどを使い、肘への負担を減らします。

手術療法

保存療法で改善しない場合や、重度の場合には手術を要する場合もあります。

肘部管症候群

肘部管症候群は、肘の内側を走る尺骨神経が、肘部管という狭い通路で圧迫されることで発生する神経障害です。尺骨神経は、小指と薬指の感覚や、一部の手の筋肉を支配しており、この神経が圧迫されることで小指や薬指に痛みやしびれ、筋力低下などの症状が現れます。

症状

  • しびれや感覚異常:小指や薬指にしびれや感覚の鈍さが生じます。特に長時間肘を曲げた姿勢で症状が悪化します。
  • 筋力低下:手の細かい筋肉が支配されているため、手や指の動きが鈍くなり、物を握る力が弱くなります。
  • 痛み:肘の内側や前腕、小指、薬指に痛みが現れることがあります。
  • つまむ・つかむ動作の困難:指をつまむ、物を握るなどの動作がしづらくなることがあります。

原因

  • 肘の屈伸動作の繰り返し:肘を頻繁に曲げ伸ばしする動作や、長時間曲げたままの姿勢が神経に負担をかけます。
  • 圧迫や衝撃:肘の外部からの圧迫や、転倒などで肘を強打すること神経が傷む原因となります。
  • 骨の変形や異常:骨折や変形性関節症などで肘部管が狭くなり、神経が圧迫されることがあります。
  • 関節炎や腫瘍:関節炎や腫瘍によって、神経が圧迫されることがあります。

治療法

保存療法

  • 安静:患部を安静に保つことが重要です。肘を長時間曲げた状態を避けます。
  • 薬物治療:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎剤を使用します。
  • 注射療法:炎症を抑えるためにステロイド注射を行います。
  • 理学療法:神経への圧迫を減らすためのストレッチや筋力強化運動を行います。

手術療法

保存療法で改善しない場合や、神経の圧迫が強い場合には、手術が検討されます。手術では、肘部管を広げることで尺骨神経への圧迫を軽減します。

腱鞘炎(ばね指)

腱鞘炎(ばね指)は、筋肉と骨をつなぐ腱を包んでいる腱鞘が炎症を起こした状態です。腱と腱鞘の摩擦が増すことで、炎症が生じ、痛みや腫れ、動きにくさが発生します。特に手指でよく見られます。多くの場合、保存療法で腱鞘炎は改善しますが、再発しやすいです。痛みが治まった後も、予防のために適切なストレッチや運動を行うことが重要です。

症状

  • 痛み:指の付け根などに痛みが生じ、特に動作時に強くなります。
  • 腫れ:患部が腫れて、押すと痛みが強くなります。
  • 動きの制限:痛みのために指の動きが制限されます。
  • 引っかかり感:指を曲げ伸ばしする際に引っかかるような感覚がある場合があります。特に朝起きた時にこわばりを感じることが多いです。

原因

  • 繰り返しの動作:パソコン作業、スマートフォンの使用、家事、スポーツなど、同じ動きを繰り返すことが原因で腱や腱鞘に過度な負担がかかります。
  • 加齢:腱や腱鞘が年齢とともに柔軟性を失い、炎症を起こしやすくなります
  • ホルモンバランスの変化:妊娠中や更年期には、ホルモンの変化により腱鞘炎が起こりやすくなることがあります。

治療法

保存療法

  • 安静:患部を安静に保つことが重要です。痛みがある動作を避けます。
  • 薬物治療:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎剤を使用します。
  • 注射療法:炎症を抑えるためにステロイド注射を行います。
  • 理学療法:ストレッチや運動療法で腱や筋肉を柔軟にし、炎症を和らげます。

手術療法

保存療法で改善しない場合や腱鞘を切開する手術を要する場合もあります。

母指CM関節症

母指CM関節症とは、親指の付け根にある母指の手根中手関節(CM関節)が、加齢や負担によって軟骨がすり減り、変形や痛みが生じる状態です。この関節は、物をつまむ動作や手を使う際に重要な役割を担っており、特に手の使いすぎや加齢に伴う変化が原因で発症することが多いです。母指CM関節症は、保存療法で改善することが多いですが、進行した場合は手術が必要になることもあります。

症状

  • 親指の付け根の痛み:特に物をつまんだり握ったりする際に痛みが出ることが多いです。
  • 腫れやこわばり:炎症によって親指の付け根が腫れたり、動きが制限されることがあります。
  • 関節の変形:進行すると親指の付け根が変形し、手の外観が変わることがあります。
  • 握力低下:親指を使う際の痛みや関節の変形により、物を握る力が弱くなることがあります。

原因

  • 加齢:関節の軟骨が年齢とともにすり減ることで、摩擦が生じて関節に負担がかかり、炎症や変形が起こります。
  • 手の酷使:特に親指をよく使う作業(パソコン、スマホ操作、家事、細かい作業など)が原因で、関節に過度な負担がかかり、軟骨が消耗します。
  • 外傷や過去の怪我:親指の関節に以前に怪我をしていた場合、関節症を発症するリスクが増加します。

治療法

保存療法

  • 安静:患部を安静に保つことが重要です。痛みがある動作を避けます。
  • 薬物治療:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎剤を使用します。
  • 注射療法:炎症を抑えるためにステロイド注射を行います。
  • 理学療法:ストレッチや運動療法で腱や筋肉を柔軟にし、炎症を和らげます。
  • 装具療法:親指の負担を軽減するため、サポーターや装具で固定し関節を保護します。

手術療法

保存療法で改善しない場合は手術を検討します。

手根管症候群

手根管症候群は、手首にある「手根管」という狭いトンネル状の部分で、正中神経が圧迫されることによって引き起こされる神経障害です。正中神経は、手の親指、人差し指、中指の感覚や筋肉の動きを制御しているため、この神経が圧迫されると、手や指に痛みやしびれ、筋力低下が生じます。手根管症候群は、早期に適切な治療を行えば、ほとんどの場合、症状が改善します。しかし、神経の圧迫が長期間続くと、手や指の機能に回復しにくい障害が残る可能性もあります。症状が悪化する前に早めに治療を受けることが大切です。

症状

  • 手や指のしびれや感覚低下:特に親指、人差し指、中指にしびれや違和感が生じます。夜間や朝方に症状が強く現れることが多いです。
  • 痛み:手首や手のひらに痛みが生じ、前腕に痛みが放散することもあります。
  • 握力の低下:物を握る力が弱くなり、物を持つ際に落としてしまうことがあります。
  • 親指の筋肉の萎縮:進行すると、親指の付け根の筋肉が痩せてくることがあります(母指球筋の萎縮)。

原因

  • 繰り返しの動作:手や指を頻繁に使う作業(パソコン作業、組み立て作業、楽器の演奏など)で手根管に負担がかかり、神経が圧迫されることがあります。
  • 加齢:加齢によって手根管が狭くなり、神経が圧迫されることが多くなります。
  • 炎症や浮腫:関節炎や腱鞘炎、妊娠中のホルモンバランスの変化による浮腫が原因で、正中神経が圧迫されることがあります。
  • 外傷:手首の骨折や怪我によって手根管が狭くなり、神経が圧迫されることがあります。
  • その他の疾患:糖尿病、甲状腺機能低下症、リウマチなどの疾患がある場合、手根管症候群のリスクが高まることがあります。

治療法

保存療法

  • 安静:患部を安静に保つことが重要です。
  • 装具療法:手首を動かさないようにサポーターや装具を使用し、手根管への負担を軽減します。
  • 薬物治療:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎剤を使用します。
  • 注射療法:炎症を抑えるためにステロイド注射を行います。
  • 理学療法:神経への圧迫を減らすためのストレッチや筋力強化運動を行います。

手術療法

保存療法で症状が改善しない場合や、神経の圧迫が重度である場合には、手術が必要になることがあります。手術では、手根管の靭帯を切開し、正中神経への圧迫を解放します。

へバーデン結節

ヘバーデン結節とは、指の第1関節に生じる変形性関節症の一種で、特に女性に多く見られます。関節にこぶのような硬い膨らみができ、痛みや腫れを伴うことがありますが、進行すると痛みが和らぎ、変形やこぶだけが残ることが多いです。

症状

  • 指の第1関節にこぶができる:硬くて目に見えるこぶ(結節)ができ、関節が変形します。
  • 痛みと腫れ:発症初期に痛みや腫れが生じ、炎症を伴うことがありますが、進行すると痛みは減少する傾向にあります。
  • 関節のこわばり:指の動きが制限され、こわばりを感じることがあります。

原因

ヘバーデン結節の正確な原因はまだはっきりと解明されていませんが、以下の要因が関係しているとされています。
  • 加齢:関節の軟骨が加齢とともに摩耗することが一因と考えられています。
  • 遺伝:家族歴がある場合、発症リスクが高まります。
  • ホルモン:特に女性に多く見られるため、ホルモンの影響も関連しているとされています。

治療法

保存療法

  • 安静、テーピング:テーピングにて患部の安静を図ります。
  • 薬物治療:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤や消炎剤を使用します。
  • 理学療法:関節の動きを維持するために疼痛に応じて指を動かします。

手術療法

重度の場合や保存療法で症状が改善しない場合には、手術が検討されることもありますが、一般的には保存療法で対処されます。

関節リウマチ

関節リウマチは、主に関節に炎症を引き起こす自己免疫疾患です。免疫システムが誤って自分の身体を攻撃することで、関節の滑膜が炎症を起こし、痛みや腫れ、関節の変形を引き起こします。進行すると関節の破壊や変形、運動機能の低下をもたらす可能性があります。関節リウマチは、早期診断と適切な治療により進行を抑えることができますが、治療が遅れると関節の破壊が進み、運動機能に障害が残る可能性があります。

症状

  • 関節の痛みと腫れ:手指、手首、膝、足などの関節が対称的に痛み、腫れます。
  • 関節のこわばり:特に朝起きたときに感じる「朝のこわばり」が特徴的で、30分以上続くことが多いです。
  • 関節の変形:進行すると、関節が破壊され、変形や運動制限が生じることがあります。
  • 疲労感、発熱:全身的な症状として、疲労感や微熱を伴うことがあります。

原因

関節リウマチの正確な原因は不明ですが、以下の要因が関連していると考えられています。
  • 自己免疫異常:免疫システムが自分自身の組織を攻撃することで発症します。関節の滑膜が特に攻撃され、慢性的な炎症を引き起こします。
  • 遺伝的要因:家族歴がある場合、発症リスクが高まることがあります。
  • 環境要因:喫煙や感染症、ホルモンの変化などが引き金になることがあります。

治療法

保存療法

  • 薬物治療:抗リウマチ薬(メトトレキサートや生物学的製剤)などで免疫反応を抑制し、病気の進行を抑えます。通常の鎮痛剤のほかに強力に炎症を抑えるためにステロイドを使用することもあります。
  • 装具療法:関節への負担をやわらげるために装具やサポーターを使用します。
  • 注射療法:炎症を抑えるためにヒアルロン酸注射やステロイド注射を行います。
  • 理学療法:関節の可動域を保ち、筋力を維持するためリハビリや物理療法を行います。

手術療法

関節損傷が進行し、機能が著しく低下した場合、人工関節置換術などの手術が検討されます。