肩の痛み
こんな症状はありませんか?
  • 以前と比べて肩が上がりにくい
  • 肩を動かすと引っ掛かりや痛みを感じる
  • 肩に力が入りにくい
  • 就寝中に肩の痛みで目が覚める
  • 肩こりで頭痛や首まで痛い
  • 肩がガクッと抜ける感じがある
  • 洋服を着るときや髪を結ぶときに違和感がある
肩の痛み

頚肩腕症候群

頚肩腕症候群は、首、肩、腕にかけての一連の症状が現れる疾患の総称です。この症候群は、通常、首や肩の筋肉や神経に関連する問題が原因で発生します。

症状

  • 首の痛みやこり:頚部の筋肉や関節の問題によって、首に痛みやこりが生じます。
  • 肩の痛みやこり:肩周りの筋肉が緊張したり、炎症を起こしたりすることで、肩の痛みやこりが感じられます。
  • 腕のしびれや痛み:神経の圧迫や筋肉の緊張によって、腕にしびれや痛みが現れることがあります。
  • 頭痛:首や肩の筋肉の緊張が引き金となり、頭痛が生じることがあります。
  • 筋力低下:長期間症状が続くと、腕や手の筋力が低下することがあります。

原因

  • 姿勢不良:長時間のデスクワークやスマホ使用などで、首や肩に負担がかかる姿勢が続きます。
  • 筋肉の緊張や過労:肩や首の筋肉が緊張し、血流が悪くなることで痛みやこりが生じます。
  • 外傷や過去のけが:過去の外傷やけがが影響して、筋肉や神経に問題が生じます。

治療法

  • 薬物治療:痛みや炎症を和らげるために、鎮痛剤や外用剤を処方します。
  • 注射療法:筋肉のコリや炎症を抑える注射を行います。
  • 理学療法:ストレッチやマッサージ、温熱療法などで筋肉の緊張を和らげます。筋力や柔軟性を取り戻すためにリハビリを行います。姿勢指導を行い姿勢を正し、負担を減らすことで症状の改善を図ります。

肩関節周囲炎(五十肩)

肩関節周囲炎(五十肩、凍結肩)は、肩関節の周りの組織が炎症を起こし、肩の可動域が制限される状態です。この症状は通常、以下のような特徴があります。

症状

  • 痛み:肩関節やその周辺に鈍い痛みや鋭い痛みが感じられます。特に夜間に痛みが増すことがあります。
  • 可動域の制限:肩を動かす際に痛みが生じ、肩の動きが制限されることがあります。腕を上げる、後ろに回す、肩を動かすなどの動作が困難になることがあります。
  • 肩の硬直感:痛みとともに肩関節が硬く感じることがあり、肩を動かすときにこわばった感じがすることがあります。

原因

  • 肩の使い過ぎ:同じ動作を繰り返すことや、肩を過度に使うことで炎症が起こることがあります。
  • 外傷や怪我:以前に肩に直接的な外傷を受けた場合や、事故などで肩を痛めた場合。
  • 加齢:年齢を重ねるにつれて、肩の周囲の組織が変性しやすくなります。

治療法

  • 薬物治療:痛みや炎症を和らげるために、鎮痛剤や外用剤を処方します。
  • 注射療法:関節内にステロイドやヒアルロン酸を投与し、痛みの改善や関節のスムーズな動きを獲得します。
  • 理学療法:ストレッチやマッサージ、温熱療法などで筋肉の緊張を和らげます。関節の可動域制限がある方はリハビリで硬くなった関節を少しずつほぐして可動域の獲得を目指します。
  • サイレントマニュピレーション:著しい肩関節の可動域制限を認める場合は麻酔をした後に関節包(関節を覆う膜)を徒手的にはがして早期の可動域獲得を目指します。

腱板断裂

腱板断裂とは、肩の関節を支え、動かす役割を果たす「腱板」という筋肉や腱が部分的または完全に断裂してしまう状態を指します。腱板は、主に肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋肉(棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋)とそれに付随する腱で構成されています。

症状

  • 肩の痛み:特に夜間や動かしたときに痛みが強まることが多いです。
  • 肩の動きが制限される:腕を上げる、物を持ち上げるといった動作が困難になることがあります。
  • 肩の筋力低下:肩の力が弱くなり、日常生活に支障をきたすことがあります。

原因

  • 加齢による変性:腱板は、年齢とともに弱くなり、特に中高年の方に発生しやすいです。
  • 外傷:転倒やスポーツ中のケガ、重い物を持ち上げた際の急激な負荷で腱板が断裂することがあります。
  • 反復運動:野球やテニスなど、肩を酷使するスポーツや作業が原因となることもあります。

治療法

保存療法

  • 安静:肩の負担を減らすため、断裂した腱板が悪化しないように安静にし、重い物を持ち上げたり腕を酷使する動作を避けます。
  • 薬物治療:
    ・内服:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤、消炎剤を処方します。
    ・注射:肩関節にステロイドやヒアルロン酸を注射することで、炎症や痛みを一時的に軽減します。
  • リハビリテーション:理学療法士によるストレッチや筋力強化トレーニングが行われ、肩の柔軟性や筋力を回復させ、関節の動きを改善します。肩の可動域を広げる運動や周辺筋肉の強化を目指します。

手術療法

断裂が大きい場合や保存療法で改善が見られない場合、手術が検討されます。特に、若年者やスポーツ選手など、肩の機能をフルに回復させる必要がある場合には手術が推奨されます。

石灰沈着性腱炎

石灰沈着性腱炎は、肩の腱や筋肉にカルシウム(石灰)が異常に沈着し、炎症を引き起こす疾患です。肩の痛みや運動制限が特徴的で、中年女性に多く見られますが、男女問わず誰でも発症する可能性があります。適切な治療にて多くの場合自然に石灰が吸収され、痛みが治まることがありますが、再発することもあります。

症状

  • 急激な肩の痛み:石灰が沈着して炎症が起こると、突然強い肩の痛みが発生することがあります。痛みは夜間に強くなることが多いです。
  • 肩の可動域制限:痛みのために腕を上げるなどの動作が困難になります。
  • 肩の腫れ:炎症が強い場合、肩が腫れ、熱感を伴うことがあります。

原因

  • 加齢:腱の変性が進むと、カルシウムが沈着しやすくなると考えられています。
  • 血流の低下:肩の腱板部分は血流が少なく、老化や疲労により血行不良が起こりやすいことが原因とされています。

治療法

保存療法

  • 安静:肩の炎症を悪化させないように重い物を持ち上げたり腕を酷使する動作を避けます。
  • 薬物治療:
    ・内服:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤、消炎剤を処方します。
    ・注射:肩関節にステロイドやヒアルロン酸を注射することで、炎症や痛みを一時的に軽減します。
  • リハビリテーション:炎症が落ち着いた後、肩の可動域を回復するためにリハビリを行います。
  • 注射による洗浄:局所麻酔をして、針を使用して石灰を吸引または洗浄する方法です。超音波を使って石灰の位置を確認しながら行います。

手術療法

  • 関節鏡手術:保存療法で症状が改善しない場合や石灰が大きい場合、関節鏡を使って石灰を取り除く手術を行います。

変形性肩関節症

変形性肩関節症は、肩の関節が長年の使用や加齢によって摩耗し、関節の軟骨がすり減ることで起こる慢性的な病気です。肩の関節が炎症を起こし、痛みやこわばり、運動制限を引き起こすのが特徴です。

症状

変形性肩関節症は、初期段階では症状が出ないこともありますが、進行すると以下のような症状が現れます。
  • 肩の痛み:肩を動かしたときや、夜間に痛みが生じます。痛みは徐々に増し、肩を動かさなくても痛みを感じることがあります。
  • 可動域の制限:肩を上下左右に動かす動作が難しくなり、物を持ち上げたり腕を上げたりするのが困難になることがあります。
  • 関節のこわばり:肩がこわばり、動きが悪くなることがあります。特に朝起きたときに感じることが多いです。
  • 関節の音:肩を動かすときに「ゴリゴリ」「コキコキ」といった音がすることがあります。これは軟骨がすり減って骨同士が擦れるためです。

原因

  • 加齢:肩の関節も、他の関節と同様に長年の使用によって徐々に摩耗します。年齢を重ねると、軟骨が劣化し、関節が変形する可能性が高くなります。
  • 外傷やケガ:過去の肩の外傷(骨折、脱臼など)が原因で関節が変形することがあります。ケガの後、長期的に関節に負荷がかかることで発症しやすくなります。
  • 肩の酷使:長年にわたりスポーツや仕事で肩を酷使してきた場合、関節に負担がかかりやすく、変形が進行することがあります。
  • その他の関節疾患:関節リウマチなど他の関節疾患が原因で、肩の関節が変形しやすくなることがあります。

治療法

治療方法は、症状の進行具合や患者さんの年齢、ライフスタイルによって異なります。

保存療法

  • 安静:肩の炎症を悪化させないように重い物を持ち上げたり腕を酷使する動作を避けます。
  • 薬物治療:
    ・内服:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤、消炎剤を処方します。
    ・注射:肩関節にステロイドやヒアルロン酸を注射することで、炎症や痛みを一時的に軽減します。
  • リハビリテーション:肩の筋力を強化し、可動域を広げる運動を行います。これにより痛みが軽減し、肩の機能が改善されます。

手術療法

保存療法で十分な改善が見られない場合や症状が重度の場合、手術が選択されることがあります。
  • 関節鏡手術:関節内の炎症や損傷した組織を取り除くために行います。比較的軽度な変形に対して有効です。
  • 人工肩関節置換術:肩の関節が著しく変形し、痛みが強い場合、人工肩関節に置き換える手術が行われます。これにより、痛みが軽減し、肩の機能が改善します。

ルースニングショルダー(動揺性肩関節)

ルースニングショルダー(動揺性肩関節)は、肩関節の安定性が低下し、肩が正常な範囲を超えて動きやすくなる状態のことを指します。特に、肩が自分の意思とは無関係にずれる、または脱臼しやすくなることが特徴です。

症状

  • 肩の違和感や不安定感:肩が抜けそうな感じや不安定感があり、特定の動作をしたときに肩がずれるような感覚があることがあります。
  • 痛み:肩関節の安定性が低いため、運動や日常の動作で痛みが生じることがあります。
  • 脱臼や亜脱臼:肩関節が完全に外れたり、部分的にずれることが繰り返し起こることがあります。
  • 肩の可動域の制限:不安定性により肩を自由に動かすことが困難になり、可動域が制限されることがあります。

原因

  • 生まれつきの関節のゆるさ(関節弛緩性):生まれつき関節の靭帯や関節包が柔らかく、通常よりも関節が広く動く人がいます。これにより、肩関節が不安定になりやすく、動揺性肩関節になることがあります。
  • 外傷や過度の使用:スポーツや事故などによる肩の脱臼や亜脱臼(完全に外れるほどではないが部分的にずれる状態)が繰り返されると、肩の靭帯や筋肉が弱くなり、安定性が低下します。
  • 筋力低下:肩周囲の筋肉が弱くなったり、バランスが崩れることで、肩関節の安定性が保てなくなり、動揺性が生じることがあります。
  • スポーツや繰り返しの動作:特に野球のピッチャーやテニス選手など、肩を大きく回す動作が多いスポーツでは、肩関節に過度なストレスがかかり、動揺性が進行することがあります。

治療法

保存療法

  • リハビリテーション:肩周囲の筋肉を強化し、関節の安定性を高めるための運動療法が中心です。特に肩甲骨を支える筋肉の強化が重要です。
  • 薬物治療:
    ・内服:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤、消炎剤を処方します。
    ・注射:肩関節にステロイドやヒアルロン酸を注射することで、炎症や痛みを一時的に軽減します。

手術療法

保存療法で改善しない場合や、重度の不安定性がある場合は、手術が検討されます。
  • 関節鏡手術:関節鏡を使用して、肩の靭帯を修復したり、肩関節包を縮めて安定性を高める手術が行われます。

上腕二頭筋腱炎

上腕二頭筋腱炎とは、肩から肘にかけての上腕二頭筋の腱(けん)に炎症が生じ、痛みや不快感を引き起こす状態です。上腕二頭筋は「長頭」と「短頭」の2つの腱に分かれ、肩関節に付着しています。特に長頭腱が肩の構造上、炎症を起こしやすい部位です。

症状

  • 肩の前面の痛み:特に肩関節の前側に痛みが生じ、腕を上げたり、前方に伸ばす動作で悪化します。上腕二頭筋の腱を押すと痛みが生じます。
  • 可動域制限:腕を上げたり、回したりする動きが痛みによって制限されることがあります。

原因

  • 繰り返しの動作:スポーツや日常的な動作で、肩や腕を頻繁に使うことが腱に負担をかけ、炎症を引き起こします。特に、野球やテニス、重量挙げなどで肩を大きく使う動作はリスクが高いです。
  • 肩の他の障害:肩のインピンジメント症候群(肩峰下で腱が挟まれて炎症を起こす状態)や、腱板損傷など、肩関節の問題が上腕二頭筋の腱に影響を与えることがあります。

治療法

上腕二頭筋腱炎の治療は、保存療法が中心となります。

保存療法

  • 安静:炎症を悪化させないように重い物を持ち上げたり腕を酷使する動作を避けます。
  • 薬物治療:
    ・内服:痛みや炎症を抑えるために、鎮痛剤、消炎剤を処方します。
    ・注射:炎症が起こっている腱周囲にステロイド注射を行います。これにより炎症が一時的に緩和されます。
  • リハビリテーション:腱の負担を軽減するために、肩や腕の筋肉を強化する運動やストレッチが行われます。